教職員・学生各位

総合分析実験センター
センター長 渡邉啓一

総合分析実験センター講演会の開催について

下記により講演会を開催いたします。多くの学生、教職員の方々のご参加をお待ちしています。

 演者の猩々先生は、本学農学研究科生化学分野で修士課程を修了され、佐賀医科大学の法医学教室で助手として勤務のかたわら医学博士の学位を取得されました。今回、講演していただく研究テーマで、平成19年度科研費の若手研究(A)に新規採択されました。

日時:平成19年9月27日(木曜日)午後16:30〜17:30

場所:農学部3番講義室(農学部1号館1階124号室)

演者:猩々英紀 先生(佐賀大学医学部社会医学講座法医学分野助教)

演題:頭部外傷に伴う損傷脳の病態

要旨:頭部外傷による脳内病態やその診断マーカーを精査する事は重要である。脳の神経細胞は神経ネットワークを形成し、情報伝達において中軸的な役割を担っている。神経細胞は細胞体から軸索を伸ばし、その終末では他の神経細胞と接触しシナプスを形成している。シナプトフィジン(SYP)はシナプス小胞膜タンパク質の一つであり、シナプスの分子マーカーとして、その発現量は脳機能の指標として用いられている。即ち、SYPの増加はシナプスの増加を示し、障害を受けた神経の再生を意味すると考えられている。一方、若年性痴呆を引き起こすアルツハイマー病では大脳皮質のシナプスの脱落や脳機能の低下に伴って、SYPが減少することが報告されている。
 頭部外傷は神経細胞を傷害し、脳機能の低下を引き起こす。そこで、脳損傷モデル動物を作成し、頭部外傷が脳内SYPに及ぼす影響について検討した。その結果、頭部外傷後、脳内SYPの量的な変化は認められなかった。しかし、損傷脳において脳内SYPは変性した神経細胞体周辺や軸索損傷部に局在化している事を明らかにした。また、頭部外傷による脳内SYPの局在性の変化は、ミクログリアなどのグリア細胞の受傷応答反応を反映しており、神経細胞の変性に伴って増強していた。即ち、損傷脳において脳内SYPは神経の再生マーカーではなく、神経の変性や軸索損傷の診断マーカーとして有用である事を示唆した。
 一方、頭部外傷後の損傷脳では神経細胞のアポトーシスが引き起こされており、現在、DNAマイクロアレイ法を用いて頭部外傷がアポトーシス関連遺伝子に及ぼす影響を調べている。本講演では神経細胞変性とSYPの機能との関連について考察すると共に、現在行っている研究の一部を紹介する。

参考文献
1. Shojo H, Kibayashi K. Changes in localization of synaptophysin following
fluid percussion injury in the rat brain. Brain Res. (2006) 1078, p198-211.